協会情報

理事長挨拶

代表 松浦祥次郎 現下の世界における原子力の利用について俯瞰してみますと、福島第一事故の発生後、原発の速やかな廃止や再生可能エネルギーへの転換といった脱原子力圧力が高まったものの、結果としては、フランスでは原発廃止計画の不可避的延期、韓国においては原子力計画の国内外での食い違い等、原子力政策の矛盾が次第に明らかになりつつあります。
また、中国、インド等の新興国では、将来の経済発展、人口増加、地球環境保全の観点から、エネルギー供給確保の根本的・現実的対応として、新規導入を含む原子力利用の増加が見込まれております。

他方、我が国の原子力事業においては、少数ながら再稼働原発の着実な増加が見られつつあります。こうした傾向は、これからも一層の進展が期待されるとともに、その期待を実現する基盤となる安全・安定運転定常化への要求もより高まることが予想されます。
このような状況のもと、今後の我が国原子力事業には、発電所運用の安全性パフォーマンスの向上を図りつつ、原発再稼動をさらに推進する一方で、原子力規制委員会が進める新規制体系への移行準備を円滑に完了することが求められます。

現在、新規制体系の導入に向けた取組みが進められておりますが、実際の導入にあたっては、新規制体系に移行した後も、その実施内容が真に当初指向したとおり規制行政の科学性、実効性の向上に資するものであるかを随時評価し、改善・改良を持続できる仕組みを用意しておく必要があります。先行する米国の事例もよく参考にしつつ、周到な準備を着実に積み重ねてこそ、初めてその所期の目的を達成し得ると考えます。
JANSIは、新規制体系下における事業者の自主的安全性向上に向けたコミットメントに対応できる体制を整え、「是正処置」「構成管理」「指標管理」といった新規制体系の基盤をなす安全管理システムの整備を、事業者と協働して推し進めてまいります。

JANSIは、「福島第一事故のような大事故を再び起こさない。そのために、規制要求を満たすだけで安全が完璧であると考えず、世界最高水準の安全性(エクセレンス)を目指して絶え間ない努力を続ける」との我が国原子力事業者の固い決意(コミットメント)に基づき、米国INPOを模範として設立されました。JANSIのミッションとビジョンは、ひとえにこの事業者の決意実行の牽引にあります。
JANSIは、事業者との緊密な意思疎通を維持しながら、原子力発電所における安全運用に関する総合評価の段階的導入、発電所のピアレビュー、安全性向上提言を行うとともに、事業者への支援活動など現在の基本的な事業活動を着実に遂行してまいります。
その一方で、自主規制組織として有るべき姿に向けた自組織の全般的かつ不断のチェック・強化にも取り組み、JANSIの全階層にわたるリーダーシップの強化を通じて自主規制組織としてのオーバーサイト及びガバナンスの向上を目指します。
これにより、今後ともJANSIは、自らを高めていくとともに、原子力安全における目標となるエクセレンスを明確にし、事業者がたゆまずこのエクセレンスを追求するよう働きかけを続けてまいります。

引き続きのご支援、ご鞭撻を何とぞ宜しくお願い申し上げます。

一般社団法人 原子力安全推進協会
理事長 松浦 祥次郎