協会情報

会長挨拶

会長 ウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア 米国スリーマイルアイランド原子力発電所での事故及び米国原子力発電運転協会(INPO)設立から40年、また世界原子力発電事業者協会(WANO)の誕生から30年が経過しました。この間、世界の原子力事業者は数多くの運転情報を共有しまた良好事例を取り入れることによって、原子力安全のエクセレンスすなわち世界最高水準の安全性を目指して懸命に取り組んでまいりました。

そして、日本では、東日本大震災とそれに続く福島第一原発事故から8年が経ちました。 事故後に確立された厳しい安全審査とその後の安全対策の実施を終え、9基の原子力発電所が再稼働を果たしました。後続の発電所についても安全審査や対策工事が進められています。

JANSIでは今般、原子力事業者とともに「10年戦略」を策定しました。この「10年戦略」では、日本の原子力産業の将来を「再稼働した発電所が世界水準の安全性で運転されている」「発電所幹部が問題を自ら特定し是正する能力を高める発電所プログラムが定着し新検査制度が円滑に実施されている」「福島第一原子力発電所事故の教訓がすべての原子力従事者によって十分に生かされている」「安全文化が業界全体に行き渡り熟練した知識豊富な人材がそれを支えている」と想定しています。こうした将来像を実現するために、JANSIは「10年戦略」に基づいて原子力事業者の支援及び牽引を行ってまいります。

「10年戦略」の成否は、原子力産業界の自主規制が重要な役割を果せるかどうかにかかっています。この戦略は、全事業者がひとつの共同体となって自主規制の基盤的役割を果たすこと、また原子力事業者トップが世界最高水準の安全性を追求するために相互にピアプレッシャーを活用して継続的改善を進めていくことを目指しています。 さらにこの戦略は、「エクセレンスの追求はまず足元より」という考えから、すべてのJANSI活動を世界水準で実施していくために、JANSI職員のスキル、知識、経験を継続的に高めていくことも定めています。

2019年度、私たちは、まずピアレビューの有効性向上に注力するとともに、原子力事業者が取り組む是正処置プログラム、コンフィギュレーションマネジメント、リスクマネジメントそして共通自主PIといった各プログラムを支援する活動を継続してまいります。さらに原子力エネルギー協議会(ATENA)、原子力リスク研究センター(NRRC)、WANO等ピア組織との協働関係も推進してまいります。 また、WANOのフォローアップレビューをJANSIのピアレビューに取り込むとともに、WANOに対して同等性を申請し、その取得に向け審査プロセスを開始します。

今年3月に開催したJANSIアニュアル・カンファレンスでは、安全文化に着目し、トップの決断と行動によって健全な安全文化を継続的に育成するという課題について議論を行いました。 また、必要とされる安全文化を育成する上で、原子力に携わるすべての者に求められる役割についても考えました。日本の事業者のみならず他産業や海外のパネリストも、安全を確保する上で文化のあり方が極めて重要であると指摘しています。 JANSIにとって安全文化は常に最優先事項です。それはJANSI内部においても然り、また会員各社においても同様に優先すべき事項と考えます。それは、すべての活動において意識するべきテーマなのです。

1979年、米国海軍の原子力潜水艦の乗組員として大西洋上にいた時、私は、スリーマイルアイランドの事故を知りました。情報は限られていたものの、状況の深刻さは疑いようがありませんでした。その 2年後、私は海軍を退役し、INPOの一員となってそこで35年間にわたり勤務しましたが、この間の私のキャリアは、あの運命的な事故とその教訓が米国の原子力事業者において生かされ原子力安全の着実な向上が図られていることをひとつひとつ確認していくことで形づくられていきました。安全についての新しい文化を作り出そうという私たちの試みはそれは困難を極めましたが、今日、そうした米国での長い道のりを振り返って思うのは、足らざるところを自ら認識しその解決に率先して取り組む原子力事業者トップのリーダーシップこそが、まさに私たちが成し遂げた成功の鍵であったということです。日本においても何よりもまずこの考えを念頭に置いて、 原子力事業者を支援するプログラムや活動を展開していきたいと思います。

JANSIの「10年戦略」の策定にあたり、原子力産業界にも大きな役割を果たして頂いたことに感謝申し上げます。 私たちはこの戦略で設定した方向性並びに事業者トップの深いコミットメントに自信を持っておりますし、また原子力産業界のすべての方々にこの戦略を成功に導くための役割があることを知って頂きたいと思います。美しい調和を目指す日本の新時代「令和」において、私たちは困難なエクセレンス追求の旅を決意をもって進めてまいります。

一般社団法人 原子力安全推進協会
会長 ウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア