活動実績等

三菱マテリアル株式会社 エネルギー事業センターにて
第193回安全キャラバンを実施

2023(令和5)年12月15日、三菱マテリアル株式会社 エネルギー事業センターにおいて、第193回安全キャラバンを実施しました。
キャラバンはWeb開催で、各事業所より総勢約80名が出席されご聴講頂きました。

1.キャラバン概要

① ’安全文化’とは何か?一人ひとりが深く考えて理解するための基本的な材料と考え方の枠組みを提供する

② 組織文化について、組織文化が形成・変化する過程について、典型的な事例を紹介する


前半は、講演動画「原子力における 安全文化醸成の取り組み」を視聴し、安全文化醸成に関する基本的な考え方について参加者の皆様に一通り共有して頂き、後半は、ビデオの内容についてJANSIメンバーとの質疑応答を行いながら、組織文化に関する国内外の具体的な事例を交えた意見交換を行いました。



2.「原子力における 安全文化醸成の取り組み」の講演動画(講演者:前田典幸)はJANSIのHPに掲載されている内容を本キャラバン用に編集したものですが、「事故原因と文化」、「組織文化と安全文化」「安全文化醸成への取り組み」の三部構成となっており、その骨子は以下の通りです。

  • 「安全文化」の生い立ちから、「安全文化醸成活動」の意味
    福島の事故以前は、日本の原子力は「世界に誇れる安全実績」であった。組織のメンバーも優秀であると認識されていたため、日本として、また、組織としても、「自分は大丈夫」という正常性バイアスが働いて「安全文化」を自らの問題としてきちんと考えず、その重要性を深く汲み取るまでには至っていなかった。さらに言えば、「安全文化」というものを旧来の安全活動と同列に捉えて「安全は大事である」というレベルの認識からほとんど変わっていなかったのではないかと思われる。
  • 如何に組織の文化が、事故や問題に深く関与しているか
    私たちは、事故が起こると直接的な原因について対策を講じるが、同様の事故やトラブルが繰り返されることが少なくない。 それは、事故やトラブルの根本的な原因として「組織の文化」を見直していないからではないか。 単純に「安全は大事である」という意識を安全文化と呼んでいるのではなく、安全の問題に対して最優先に注意を向けること、それが個人としても組織としても自然に行われていることが安全文化である。 安全の問題は技術や人や組織のあらゆる側面が対象であり、人の安全意識だけを安全文化の問題だと狭く捉えないようにしなければならない。
  • 「安全にとってより好ましい文化」にするためにリーダーはどう振る舞い、何をしていけばよいのか
    組織を変えていくには組織全体の人が参加する必要があり、この時、リーダーの役割は重要な要素となる。 特に、経営者や管理者の影響力は大きく、部下はその影響を大きく受ける。 経営者や管理者の価値観や力点の置き方が組織文化を左右するとも言える。 また、部下は経営者や管理者の公式的なコミットメントよりも、日頃の言動をつぶさに観察し本音を見極め、場合によっては忖度するというようなこともある。 つまり、公式・非公式を問わず、経営者や管理者は、自身の言動を相手(部下)がどう感じているか、どう受け取っているかに注意する必要がある。 リーダーとしての経営者・管理者自身が、自分自身を含めて現状を「これで良いのか」と問い直す姿勢が求められる。 得てして経営者や管理者は部下の行動や業務の結果を管理し評価することには長けているが、自らの姿についてはどうか。 つまり、今の組織の状態や組織文化は、経営者・管理者がこれまでに行ってきたマネジメントの結果であり、自らのマネジメントのやり方が「これで良いのか」を問い直すことこそが重要である。


3.意見交換:「安全文化の醸成へ向けて取り組んでいくには」

三菱マテリアル株式会社 エネルギー事業センターからのご参加者とJANSIファシリテータ(安全文化G 越前正浩、深野琢也)でディスカッションを行いました。主な内容は以下の通りです。(M:参加者、J:JANSI)


M:一人ひとりがやっていくこと(取組み)としては何があるのか?
J:必ずしも確立した方法論という訳ではないが、日頃から自分の仕事が他人や他の組織(顧客や社会一般)にどれくらいの広がり(繋がり)があるかを考え、自分がコントロールできる(すべき)リスクは何で、万が一失敗した時にはどこまで影響が及ぶかについて考えを巡らしておくことがポイントと考える。或いは影響範囲が(余りに)広く、考えれば考えるほど怖くて動けないということが起きるかもしれないが、そこまで考えて仕事をするとしないのとでは、ミスを防ごうというモチベーション一つとっても姿勢が変わってくるだろう。身の回りの小さなことからリスクや影響の連鎖を考え、日々意識をすることが一人ひとりにとっては大切である。

M:気づきを得るためには知識が必要であるが、組織全体まで行き届くようにはどうすれば良いか?
J:これは業界全体が抱える深遠な悩みであると思う。何らかのきっかけがないとなかなか難しいと思うが、それぞれの方々が自分の立場で疑問を持ったタイミングでそれをどこまで深掘りできるかが勝負だろう。また、何かあった時にちょっとした疑問であってもフランクに「聞ける」職場環境が整っていることが大切である。一人一人が複数の人に聞くことができれば、それが波及してやがて関連する知識を持っている人(例えば先輩・経験者)にたどり着き、答えやヒントを得ることができるだろう。その意味では、日頃からフランクにものごとを聞ける関係性を周囲と築いていくことが重要だと考える。



4.講演会終了後のアンケートでは

  • 不注意による行動ミスにより、トラブル事象の原因につながる可能性がある。日ごろの行動を見直すきっかけとなった。
  • 議論の内容はなかなか難しいテーマだと思いますが、問題をどう解消していけば良いのか、そのプロセスについてヒントを得ることができました。人的ネットワークの構築に心がけるよう努めたいと感じました。
  • 普段からコミュニケーションを取ることの大切さや、組織の一員としてどのような行動を取ればよいかが、分かった気がする。
などのご意見・ご感想をいただきました。

以上