平成25年12月19日、東京都港区にある原燃輸送(株)において、第141回安全キャラバンを実施し、安全講演会と安全情報交換会を行いました。
原燃輸送(株)本店の職員68名が出席されました。
講演会の冒頭、代表取締役社長 吉澤 厚文様から、
とのご挨拶をいただきました。
ご挨拶の後、熊本大学教育学部附属教育実践総合センター 教授 吉田 道雄 様から「安全文化醸成に求められるリーダーシップとコミュニケーション力 -オープンで明るい企業風土づくりをめざして-」 と題してご講演いただきました。
◆自分が専門にしているグループ・ダイナミックスは、集団との関わりを通して人間を理解し、人間行動の法則を実践に生かすことを目的にしている。安全文化の観点からいうと、事故をなくすためにリーダーシップや人間関係を改善しようという実践的な試みである。
◆グループ・ダイナミックスによる「事故防止の実践」については、いまから半世紀ほど前に行われた西鉄バスの事例が参考になる。西鉄バスではハードの改善だけでは事故がなくならないことから、事故を起こした運転士を集めて、グループ・ダイナミックスを応用した研修を導入した。そこで業務上の問題点を洗い出して検討した後、自分ができることをひとつだけ決めて職場に戻った。その結果、それまで70件あった事故が14件に減った。なかでも各事業所から複数で参加し、その後も職場で検討会を続けた運転手の集団は60件から7件に減った。つまり職場に戻ってからの仲間意識、さらには周囲のケアやサポート、上司の協力が重要だったのである。
また、1960年代から70年代にかけて行われた三菱重工業長崎造船所の事例では、現場の監督者を集めてリーダーシップのトレーニングを重ねるとともに、毎週45分間職場で安全に関わるミーティングを実施した。その結果、事故の減少はもとより、社員のマイプラント意識向上、コスト管理の徹底、出勤率の向上などさまざまなサイドエフェクトもあった。
◆安全文化の醸成のためには、コミュニケーションとリーダーシップが欠かせないが、リーダーが一生懸命やるだけではうまくはいかない。それを受け止めてさらにリーダーを盛り上げるフォロワーが必要である。
リーダーシップ力は、「専門力」と「人間力」で決まる。ここで「専門力」は部下よりも多くの知識があるということではない。知らないこと、身に付けておかなくてはならないことがあったら、すぐにそれを吸収し磨く努力をする姿を見せるのも「専門力」である。また、リーダーの良し悪しは個人的な特性で決まるのではなく、リーダー自身の行動で決まっていくものである。職場を牽引するリーダーとなる方々はトレーニングを重ねてコミュニケーション力、リーダーシップ力を鍛えて欲しい。
◆組織には、「トップダウン」と「ボトムアップ」という考え方がある。私は個人的にはボトムという言葉は適切ではないと考え、「グラウンドアップ」という言葉を使っている。「トップダウン」は水が上から下に流れるような上意下達のスタイルであるが、水を汲み上げ続けていかなければ、その流れもすぐに枯れてしまう。つまり「グラウンドアップ」は水蒸気を吸い上げる太陽のような力が必要なのである。組織のリーダーたる者は、「山は大地があってこそ存在する」、つまりは「上司も部下が仕事をしてくれるから存在する」という気持ちを忘れずにいていただきたいのです。
との貴重なお話をいただきました。
●ユーモアあふれる楽しい講演をありがとうございました。我々が眠くならないように工夫をこらしたメリハリのある講演で参考になりました。お話の内容はもちろん、先生の話術も大変勉強になりました。私が熊本出身のため、お話のされ方、ユーモア感覚が懐かしい気もしました。
●リーダーシップについては、過去の上司(反面)の行動、それらをふまえた今の自分の行動をふり返り、できているかはともかくとして、目指す方向性はまちがっていないことを確認することができた。
●本日は為になるお話を有難うございました。先生のお話を聞いていて、我々の生活は「集団」とは切っても切れないモノであるということを理解しました。切っても切れないモノなので、コミュニケーション力を磨かなくてはならず、「集団」を意識することで、仕事もやりやすくなり、安全性も高まり、モチベーションも上げることができるということだと思います。今後とも社内のコミュニケーションを図り、仕事の質を高めていきたいと思います。またリーダーシップに関する話も今後部下を持つ事になれば是非思い出したいと思います。
●本講演の中では、理論を実践することの大切さを特に強調されていると感じました。そのための失敗ならばあるいはするべきなのかもしれません。私は新入社員ですので、失敗することが少し恐いと感じているのですが、もう少し実践と失敗を経験することを覚えたいと思います。
などのご意見・ご感想をいただきました。
安全情報交換会では、原燃輸送(株)様からご要望のあった「緊急時における円滑なコミュニケーション」をテーマに、原燃輸送(株)の総合事故訓練の取り組みについて意見交換を行いました。
以上