1979年の米国スリーマイルアイランド2号機事故(TMI事故),1986年の旧ソ連チョルノービリ事故,そして2011年の福島第一原子力発電所事故は,いずれも人類社会全体に重大な影響を与えました。また,同時に世界各国の原子力エネルギー政策にも極めて大きな影響を及ぼしました。私たちの多くは,これらの出来事を実体験として知っています。
このような事故を「二度と起こさない」という我が国の原子力産業界の強い決意と反省から,2012年に民間の第三者機関として原子力安全推進協会(JANSI)が設立されました。私たちJANSIは,世界最高水準の安全性の追求を使命とする組織です。
これまでの国内原子力産業界とJANSIのウェブスター会長,山﨑前理事長そしてJANSIの多くの職員のたゆまぬ取組みにより,我が国の原子力発電所は順次安全な電力供給を再開してきました。これからも原子力安全のさらなる高み,即ちエクセレンスを目指す取組みをたゆむことなく継続することは,原子力産業界とJANSIの共同の責務であり,社会への約束でもあります。JANSIは,この取組みを牽引する使命をこれからも果たしてまいります。
2019年3月に策定した「10年戦略」は,5年が経過したことから,これまでの達成状況とその後の環境変化を踏まえて,今後10年間の戦略に改正致しました。JANSIの取組みの基本は今後も変わることはありませんが,これまでの成果と現在の課題を踏まえて,より一層の高みを目指して14の主要なアクションに取り組んでまいります。
JANSIは,1979年の米国TMI事故を契機に設立された米国の原子力発電運転協会(INPO)をモデルとしています。私は,今年4月に米国ジョージア州アトランタ郊外のINPOに2週間滞在し,この先輩組織の最新の取組状況を学んできました。INPOは既に45年の歴史を持ち,米国の原子力発電所は高いパフォーマンスを実現しています。それでもINPOは常に最新の科学的知見を取り入れ,自らの取組みを継続的に更新しています。最近の事例では,データサイエンスを分析に取り入れ,米国の原子力発電所の高いパフォーマンスをさらに向上させるための方策を検討しています。JANSIにおいても今後の10年戦略の中で,このような最新知見を自ら継続的に学び,自らの活動を高め,原子力産業界がエクセレンスを目指す取組みを牽引するとともに,支援してまいります。
原子力事業者は,原子力発電所等の現場で「ご安全に!」との声掛けを行います。私たちJANSIは原子力事業者と共に,世界から参照される原子力安全の姿を求めてまいります。
その決意と気持ちを込めて,「さらに,ご安全に!」
一般社団法人 原子力安全推進協会
理事長 加藤 功