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会長挨拶

会長 ウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア 2026年度の年次のご挨拶を申し上げます。日本の原子力産業界における安全性向上の状況、JANSIの取組みの進展、そして国内外の原子力産業界に影響を与える外部要因について、私の考えを述べさせていただきます。

日本では、2026年6月時点で、9カ所の原子力発電所で15基の原子炉が運転を再開しています。更に、これは原子力産業界にとって重要なマイルストーンとして、東京電力ホールディングス柏崎刈羽原子力発電所6号機が、15年にわたる停止期間を経て再稼働しました。この改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)は、同社の経営層や職員の方々の努力はもちろん、幅広い原子力関係者からの支援も得て、運転再開に成功しました。運転中の15基は、国際基準に照らして高いレベルの安全性と信頼性のもと運転されています。しかし、一方で、中部電力浜岡原子力発電所の基準地震動の評価に関する不適切事案が報告されています。これは原子力産業界にとっては重大な問題です。最終的な根本原因の究明には中部電力による更なる調査が必要ですが、JANSIは、原子力エネルギー協議会(ATENA)、電気事業連合会などと協力して、この問題から包括的な教訓を学び、それらを幅広く共有して、各事業者による再発防止のための適切な対策の実施を支援してまいります。また、この問題を踏まえて、JANSIの業務を適宜改善するとともに、中部電力の改革の努力も支援してまいります。

JANSIは、改定10年戦略の2年目を終えました。質の高いピアレビューを実施することに引き続き重点を置きつつ、WANOのピアレビューとの同等性の更新に必要な現場での確認も行いました。発電所の運転状況を継続的に把握する業務も進展しており、集団被ばく線量や労働災害の低減のために事業者とも密接な協力を行っています。また、JANSIは、現場のリスク管理の向上に特に重点を置いています。このため、日本の他の産業界の中で信頼性ある運営で優れた実績を有する企業、とりわけ鉄道会社と航空会社に着目しています。その一環として、事業者向けの社長研修では、JR東日本さまから労働安全に係わる基準と良好事例を学ぶ機会を得、更に、アニュアルカンファレンス2026では、ANAグループ企業であるANAウィングスさまから基調講演をいただきました。各社さまのこうした貴重なご経験を活かして、現場のリスク管理における私たち自身の基準や行動も改善してまいります。

2026年度を展望しますと、JANSIは、質の高いピアレビューの実施、運転中の発電所の状況を継続的に把握し改善を支援する能力の向上、集団被ばく線量の低減や労働安全等、産業界で改善を必要とする分野での支援に引き続き重点的に取り組みます。WANOでは2030年での明確な目標がありますが、日本の全ての発電所がそれらの目標を達成するためには、いくつかの重要なギャップを埋める必要があります。近年では、運転を再開した発電所において、運転、保修、エンジニアリング、機器の信頼性等の中核的な分野で大きな進展がありました。今後は、安全性を更に高めるために、運転実績の向上、訓練の実施、運転経験情報の活用、リーダーシップと組織有効性の改善に一層努力する必要があります。プロフィシェンシー(*)の向上、現場のリスク管理への取組みも継続します。
*:力量(知識・技能)を身に付け、作業実施時における状況からその時の課題を特定し、その課題に適切に対処する能力

2025年度のご挨拶でも申し上げましたが、安全で、安定した、低炭素かつ強靭な適応力がある発電の重要性は、従来にも増して明らかになってきています。現代社会を支えるのは信頼できる安全な電力であり、実際に社会の電気利用は進展し、その必要性も高まっています。多くの国々がそのような需要に対応するために原子力を優れた手段とみなすようになっています。これは、米国と同様に日本においても当てはまります。米国では既に運転が終了した発電所を再開させようとしており、加えて、小型モジュール炉と従来の大型炉の建設についても真剣に議論されています。関西電力が新たな原子炉の設置に向けた調査の再開を公表したことも、原子力発電の重要性を示すものです。この重要な時期にあたって、私たちは、原子力産業界の安全と高いパフォーマンスのために真剣に取り組んでまいります。

最後になりますが、JANSIには、10年戦略に定めた明確な方向性と、原子力産業界の最上層のリーダー特に理事会からの揺るぎないご支援をいただいております。また、本店や発電所の幹部からは、JANSIが追求する世界的なエクセレンスを支持していただいております。JANSIは、原子力産業界の関係機関であるATENA、電力中央研究所原子力リスク研究センター(NRRC)、電気事業連合会及び世界原子力発電事業者協会(WANO)、また志を同じくする組織と、原子力安全向上の使命を全うするため密接に連携してまいります。原子力事業者の共同体の一員として、JANSIは、これからも「エクセレンスは足元から」をモットーに、パフォーマンスの継続的な向上にまい進してまいります。

一般社団法人 原子力安全推進協会
会長 ウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア