活動実績等

三菱マテリアル(株)エネルギー事業センターにて第171回安全キャラバンを実施

平成29年12月8日、埼玉県さいたま市にある三菱マテリアル(株)エネルギー事業センターにおいて、第171回安全キャラバンを実施し、ワークショップ形式での安全情報交換会を開催しました。


最初に、原子力安全推進協会 システム基盤部 安全文化グループの越前正浩、安島浩美及び深野琢也から、「組織の文化とは?」「設計・解析業務における安全性とは?」と題して情報提供を行った後、参加者によるグループワークを実施しました。この安全情報交換会には、三菱マテリアル(株)エネルギー事業センターの社員12名が出席され、熱心な討議が行われました。

1.情報提供

最初に、組織の文化について、
◆組織においては、個人やチームのミス・エラーだけでは説明できない組織事故が度々発生します。それを防ぐためには、安全に寄与する組織文化(=安全文化)というものを考えなければなりません。
◆組織文化については、国際的な動きとして二つのキーワードがあります。それは、Organizational Culture for Safetyと、Systemic Approachです。
◆従来、安全文化を指す言葉としてSafety Culture(SC)という言葉が使われていました。SCは、組織の中の、限られた範囲のスモールな活動を指します。それに対して、組織の活動そのものを指すラージな概念として使われるようになったのがOrganizational Culture for Safety(CS)です。安全文化とは、組織のありようそれ自体である、という考え方の転換がこの言葉には込められています。
◆では、組織のありようそれ自体、とはどんなことなのでしょう。組織には、ルールや仕組みといった建前の部分と、常識や当たり前のような本音の部分があり、これらはお互いに影響し合う関係です。また、組織は社会環境などの上部構造の変化に対応し、無意識にアジャスト(=適応)していくという性質があります。さらに、集団主義や傍観者効果といった、組織ならではの特徴も持っています。CSは、こうした組織の特徴を認識したうえで考えていかなければなりません。
◆次にSystemic Approachについてです。自然界や生命、組織などのシステムは、構成要素の密接な相互作用が頻繁に繰り返されることで、分かち難い固有の性質や働きを持つに至ります。システムの構成要素を細かく分類し、それぞれについて個別に考えたとしても、システム全体の性質を理解したことにはなりません。全体を一体として大きく理解する見方が必要です。これがシステミックという考え方です。組織について考えるときは、組織全体を深く大きく見る姿勢が重要なのです。
◆Organizational Culture for SafetyとSystemic Approachは安全文化を考える上で、重要なセットメニューです。このように、安全文化についての国際的な考え方は大きく進化していますが、その方向性は、東洋的、日本的な思想と一致しています。しかし、日本では既存の外部のスタンダードに合わせることにばかり意識が向いているようです。安全文化の考え方をさらに深めていくためにはどうすればよいか、福島第一の事故を起こした日本では、それゆえになおのこと主体的に考えなければなりません。
とのお話をさせていただきました。

次に、設計・解析業務における安全性について、
◆設計・解析業務は原子力事業の幅広い側面を支える、必要不可欠で重要な要素です。しかし、様々な未然防止の仕組みが作られているにも関わらず、依然としてミスやエラーは起きています。
◆仕組みを作るうえで重要なのは、人間の特性を理解することです。人間はミスを起こす存在で、精神論は効果的ではありません。作業や仕組みに対する納得感、理解、重要性の認識があり、さらに仕組みのメンテナンスを怠りなく行うことで、はじめて仕組みを有効に機能させることができます。
◆では本当にそれだけで良いのかというと、加えて、ここで一つ眼力というものがポイントとなります。過去の事例を見てみると、高度な手法に基づいた緻密な解析よりも、ベテランの経験に基づいたエンジニアリングジャッジメントの方が、精度の高い解析が行える場合があることが分かります。
◆我々JANSIでは、眼力とは直感力だと考えています。仕組みやシステムを絶対視してただそれに忠実に準拠するだけでは危険です。システムや仕組みは複雑になればなるほど、ちょっとしたミスやエラーが気づかぬうちに大きな逸脱を招きます。そのような逸脱に気付くためには、知識・情報の厚みを増やし、それを組織としてため込み、ノウハウのような暗黙知の部分にも注目して、直観力を磨くことが必要です。
◆現在は規制対応により全数チェックなどを強いられることがありますが、膨大な作業量に対して成果が実感されにくく、社員の士気や眼力の低下を招く悪循環に陥る場合が見受けられます。これに対して、良好な職場環境において組織的な学習が活発化し、眼力の向上につなげていくのが望ましいループです。こうしたループを回すことができれば、安全性向上だけでなく、製品やサービスの付加価値向上、合理的経営といった良い結果に繋がっていくのではないかと思います。
とのお話をさせていただきました。

2.グループ討議及び全体討議


情報提供に続いて、参加者が3つのグループに分かれ、「組織の自画像」及び「組織文化と安全との関わり」について討議を行い、最後にそれらをお互いに発表して意見交換を行いました。



講演会終了後のアンケートでは、

自分の組織を見つめ直す良い機会になった。組織の見方についての知見が得られて良かった。
眼力について考えたことで今後の業務への気づきになり有意義だった。
風通しがより良くなるよう、聞く環境、明るい職場作りにより一層努めたい。
職場のメンバーがどう考えているのかわかってよかった。

などのご意見・ご感想をいただきました。

以上