活動実績等

日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所にて第166回安全キャラバンを実施

平成29年4月18日、茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所の大講堂において、第166回安全キャラバンの安全講演会を午前に実施し、午後には安全情報交換会を行いました。

1.安全講演会

原子力科学研究所に従事する所員及び協力会社の職員、更にTV会議システムを利用して東海本部、東京事務所、敦賀地区及び人形峠等の職員合わせて328名が聴講されました。              

講演会の冒頭、原子力科学研究所長 湊 和生 様より

「私たち原子力科学研究所においては、昨年(平成28年度)、保安検査等において幾つかの指摘を受けております。これらに関しては、皆さんご存知のように、アクションプランを作成し、対策を進めているところです。今回の安全キャラバンの依頼もこのアクションプランに基づいたものであり、安全文化の醸成について原子力科学研究所として皆さん一人一人に考えていただき、意識を高めていこうということで実施しているところであります。また、原子力科学研究所では、原子力機構の中でもいわゆる労働災害が多い拠点となっております。これに関しては、昨年前半に件数が増えたということで、昨年後半からは改善運動を展開しておりますが、まだまだ道半ばだと思っております。私たちは、日々安全を第一に、改善を進めていこうと努めていますが、これからも安全文化、安全意識の浸透・徹底を進めていかなければならないと考えております。 本日、佐藤先生に「安全を創る」というタイトルでご講演をしていただきますが、これは私たちにとって有意義なものであると考えています。皆さんは先生のお話をよく聞いていただき、また考えていただき、行動に移していただきたいと思います。よろしくお願いします。」

とのご挨拶をいただきました。

ご挨拶の後、東日本旅客鉄道株式会社 人事部 安全教育担当部長 佐藤 寿 様から「安全を創る」と題してご講演いただきました。


講演では、

◆安全は、誰か適当な人物に任せておけばうまくいくほど簡単なものではない。安全文化を醸成したいと考えるならば、組織の上に立つ者が安全に興味を持ち、熱い思いを持たなくてはならない。部下は上司を見ており、本気だと感じたら、自分も本気でやらなければと考えるものである。
◆逆に、上司が安全に対して適当な態度をとっていたら、自分も適当で良いと考えるだろう。安全への熱意は、上から下に伝わるものである。また、現場第一線で働く職員は、安全対策を考えるのは会社の仕事、あるいは「誰かが安全を提供してくれる」と考えてはならない。当事者意識を持ち、「これでいいのか、もっと安全で安心な方法はないのか」と常に考える習性を持つべきである。
◆JR東日本では「安全システムを導入したから・マニュアルを整備しているから大丈夫」という考えを「過信の壁」と表現し、「今まで大丈夫だったけれども本当に大丈夫か?」と疑い、その壁を壊して改善し続けること、その心がけが安全文化を創ると考えている。 我々は組織に安全文化を根付かせるため、あるいは社員の命を守るために、鉄道人魂をもった社員を育てるための取り組みを実践している。鉄道人魂とは、「自分自身の命、部下や同僚の命、お客さまの命を守るために何をしなくてはならないのかを自ら考え、自ら行動できること」である。
◆この鉄道人魂があったことにより、東日本大震災の際には、会社からの指示が届かなかったにもかかわらず、沿岸部に停車した30本の電車からお客さまを高台に避難させることが出来た。こうした社員を育てるために、JR東日本では、「基本動作を愚直に実行しよう」「正しい報告と速やかな報告に心がけよう」「慌てない、焦らない」「危ないと思ったら列車を止めよう」「自分だけは大丈夫と考えるなかれ」ということをテーマに、従業員の心に残る安全教育を実施している。
◆最後に、安全文化の醸成、あるいは安全対策の実践には、人間の特性を知ることが大切であるということをお伝えしたい。まずは、「危険への感受性が鈍ったときに事故が発生する」ということである。昨日の無事は今日・明日の無事を保証してくれるわけではないが、無事な日が続けば続くほど、我々は安全に対する目の感性が低下し、注意力が散漫になり、それが事故につながっていく。また、「ベテランや上に立つ者は幻想に陥りやすいものである」ということである。「職場で働く社員・作業員は身も心も健康な状態で仕事に来ている」という健康幻想、「一度注意すれば、あるいは安全活動のスローガンを掲げれば、皆が真剣に取り組む」という注意幻想(号令幻想)、「何かあったときに文書を配布(メール送信)すれば、皆が全てを読んで行動してくれる」という文書幻想である。 こうしたことを念頭に、今後も御所の安全を考えていただきたい。

との貴重なお話をいただきました。

講演会終了後のアンケートでは、

施設を管理する者、安全に携わる者には大変充実した内容の講演でした。JRの安全に対する意識が格段に高いことや自主的安全性向上の取り組みが長く続けられていることに感心した。
佐藤先生の講演にあった「業務を推進する基本(シンプルで分かりやすく、相手の身になって、基本を忘れず、愚直に)」はどんな職種でも同じであることを再認識しました。お話の内容がとても分かり易く、共感しながら聴くことが出来、参考になる話ばかりで、あっと言う間の時間でした。
指差呼称や電柱の話は、大変印象深くお聴きしました。実例はとても心に残ります。また、気付いたことはアクションを起こすよう心掛けようと感じました。
安全キャラバンに初めて参加し、安全の取り組み・考え方等、大変有意義でした。現場に則した安全文化の講演を今後も継続することを望みます。

などのご意見・ご感想をいただきました。


2.安全情報交換会

午後は、当協会システム基盤部 安全文化グループ 井上 守 GLより「問いかけ・学ぶ姿勢のより一層の定着に向けて」と題して情報提供があり、引続いて、「規則の在り方も含めた法令順守」についてグループワークを行いました。

参加者は、原子力科学研究所の所員33名が参加されました。 同様のプログラムで、5月10日には日本原子力研究開発機構 敦賀地区(もんじゅ、運研センター、廃止措置センター合同開催)から20名、5月30日には日本原子力研究開発機構 人形峠環境技術センターから23名の所員の方が参加してグループワークを行いました。

安全情報交換会に対するアンケートでは、

グループワークの議論を通じて、相手に何か説明する際は、まず自分の状況を理解し、且つ相手がそれに対してどのような角度で理解しているかを考え説明するように心掛けようと思った。普段、接点の無い方々の色々な意見を聞くことができ、自分の考えに対する視野が広がった。
安全文化は、形の無い見えないものなので、どこまでやれば良いか、そこまでやる必要があるか、このやり方で良いか等、分かりにくいところがある。しかし、そのような意識や疑問を持って業務を進めて行くことが重要だと思った。
今回初めて安全キャラバンに参加し、JANSIの存在に触れる機会となりました。安全は業務に関わらず、企業が一番優先しなければならないことだと思います。安全文化について、理解を深めることが出来た。
今後も、JANSIにしかできない安全キャラバンを継続されることを望みます。

以上