活動実績等

北陸電力(株)志賀原子力発電所にて第163回安全キャラバンを実施

平成28年11月25日、石川県羽咋郡の北陸電力(株)志賀原子力発電所において、第163回安全キャラバンを実施し、安全講演会を開催しました。

1.安全講演会

講演会では、宮城学院女子大学 学芸学部 心理行動科学科 教授 大橋 智樹様から「福島第一事故以降の安全マネジメント~気付ける、変われる発電所~」と題してご講演いただきました。

この講演会には、北陸電力(株)の社員、協力会社社員等115名が出席され、終始熱心に聴講されました。


講演では、

◆なぜ人間はミスをし、それを無くすことが難しいのか?人間には環境に適応して生き延びるために備わった本能的な認知の仕組みがある。目に見えない部分でも周囲の状況から補完する仕組みや、「こういう時はこうするもの」という先入観など、我々が生きていくうえで日々大事な役割を果たしている。しかし、巡り合わせ次第でそうした仕組みは現実とのずれを生み、エラーという形で出てくることがあるのだ。また、「きちんと分ろう」と集中すればするほど他が見えなくなることや、知識や経験にとらわれて「分らないということが分らない」こともある。
◆人により大きな幅はあるが、人間はそうした弱点を持った生き物であることはよく認識すべきだ。例えば、整理・整頓・清掃というルールは、状況を認知しやすくして他に回す余力が出る分安全になるわけだが、徹底しないと見落とす危険がむしろ大きくなる。だから徹底しないと危ないという理由や背景をきちんと伝えれば、ルールを守る意識はずっと高まるだろう。
◆人間は集団になると劣化する面もある。周りに大勢人がいると困っている人を助けようという気持ちが起きにくくなる「傍観者効果」や、周りの人と違った言動をすることに抵抗感を覚える「同調行動」などがそうだ。だから、日頃から良好な人間関係を築いておくことが大事だ。
◆これまでは「安全+信頼=安心」と考えられ、ルールに従うのが安全への道だったが、東日本大震災を経験した後では「ゼロリスクなどないから常に安心せず警戒を続ける」のが正解と思う。人間をずっと不自然な状態に置くわけだが、それをやらねばならないのが震災からの学びだろう。想定に無いことが起きればその場で知恵を絞り、システムの中でも個人として自律的に正しい判断ができるようどう持っていくかが問題だ。加えて、人間としてつい一定の動きをしてしまうような特性(アフォーダンス)を利用したり、敢えてやりにくい状態にして安全への意識を高めたりする発想も必要だろう。
◆緊急対策の訓練については、慌ただしい流れを一旦断ち切って判断することが大切だ。「慣れ」のリスクもあるので、シナリオがなかったり収束に持ち込めずパニックで頭が真っ白になったりするような訓練も必要だろう。
◆電力には「甘受する文化」「主張しない文化」があるようだ。だが、原子力の安全性を高めるには、よくよく検討したうえで変えないという毅然とした判断も必要だ。反省のし過ぎは問題である。社会的受容性と安全性は必ずしも両立しないことがある。原子力発電がこの社会に必要だと考えるならきちんと主張し、言い出しにくいことでも安全のためにはしっかり社会に発信していくことが必要だ。電力会社はメディアを通さず情報を地域に発信するなど、そのためのコミュニケーションの技術を工夫し身に付けなくてはいけない。

との貴重なお話をいただきました。

講演会終了後のアンケートでは、

人間はみなパーフェクトヒューマンではなく、常にミスをする存在だということに自分自身がどれだけ気付けるかがミスを減らしていく第一歩だと思った。
人間の思い込みがこれほどあるのかということを、具体的事例を交えて説明して下さったのが非常に良かった。
人間の特性からエラーにどうつながるか、ヒューマンエラーが発生する要因が分りやすく解説されており、腑に落ちた。
実験や事例を交えた紹介からヒューマンエラーの原因となる人間の特性を理解できた。また、経験から得た提言は心に大変響いた。
新しい視点、物の見方があることに気付いた。

などのご意見・ご感想をいただきました。


以上