活動実績等

日本原子力発電株式会社 東海発電所・東海第二発電所にて第150回安全キャラバンを実施

平成27年1月27、28日、茨城県那珂郡東海村にある日本原子力発電株式会社東海発電所・東海第二発電所において、第150回安全キャラバンを実施し、安全講演会およびワークショップを行いました。

1.安全講演会(第1部)

日本原子力発電株式会社及び協力会社の社員の60名が出席されました。


講演会の冒頭、東海・東海第二発電所長の 松浦 豊 様から、

「今回は、安全キャラバン第150回目ということで、節目の回を弊社で行えること、お礼を申し上げます。記録に残る回にしたいと思います。
チェルノブイリ事故以降、原子力の安全には安全文化が重要だと言われてきました。福島事故でも、安全文化が不十分だったのではないかと思われます。我々としても、福島の反省を踏まえ安全文化に取り組んでまいりたいと思います。JANSIさんにおかれましては、JANTIから組織が変わり、さらに安全に関して我々を啓蒙して頂ける体制になったと期待しております。福島事故以降、我々は原子力の安全をより自らの問題として捉えて活動しています。昨年、資源エネルギー庁から要請のあった、自主的安全向上のプログラム作成も現在進めているところです。安全文化に取り組む上で何が一番重要かというと、どのように安全文化を根付かせるか、また、どのように安全文化を向上させるか、という2点だと思います。我々は今、アメリカの事例を勉強しています。どこまで取り入れられるか分かりませんが、少しでも前進できるよう活動を進めたいと思います。このような活動の中で、リーダーシップや、トップのコミットメントをもって様々なことを進めることの重要性を学びました。リーダーシップは社長や所長だけでなく、各組織のあらゆる職員が身につけるべきものです。
今回の安全キャラバンは、リーダーシップや安全文化を根付かせるための参考とさせていただければと思います。2日間、よろしくお願いいたします。」

とのご挨拶をいただきました。

ご挨拶の後、原子力安全推進協会 プラント運営支援部 運営支援グループ 特任調査役 渡邉邦道 から「リーダーシップについて」と題して講演を行いました。

講演では、

リーダーシップをはじめ、ヒューマンファクターや安全文化について、近年の動向や具体的な取組み等を、アメリカでの活動を紹介しつつ幅広く解説する。

リーダーシップ・ヒューマンファクター・安全文化の最近の動向として、まず、昨年4月に成案となったJEAC4111-2013でこれら3つがキーポイントとして記載されたことを挙げる。ヒューマンファクターに社会科学・行動科学の知見をもって取り組み、リーダーシップを発揮して、安全文化の改善につなげることを図ることになっている。また、米国においてヒューマン・パフォーマンスの取組みは、従来のヒューマンファクターの取組みを超えて更に広い概念として指向されようとしており、安全文化も、ヒューマン・パフォーマンスもリーダーシップも、ほとんど重なった、同じ概念で用いられるようになりつつあることも最近の動向の一つである。

リーダーシップ・ヒューマンファクター・安全文化は当然、日米それぞれで取組みが進められている。日本では電力会社は調達管理で構内協力企業と活動している。私が訪問したアメリカアリゾナ州のPalo Verde発電所では、構内協力企業職員も含め全職員2,250名を直轄で管理し、安全文化、リーダーシップ、ヒューマンエラー防止対策に取り組んでいた。安全文化、リーダーシップ、ヒューマンエラー防止対策活動は、構内全体で取り組むのが望ましく、日本で今後如何に一体となって活動を展開するかが今後の大きな課題と言える。

特に福島第一原子力発電所事故以降、日本の原子力業界は欧米の眼に晒されることが増えているが、それに対応できるよう、従来の取組みの位置づけを再確認したり、取組みの構造化を図ったりする必要があると思われる。例えば先ほどのPalo Verde発電所では、個人・リーダー・組織それぞれの基本的行為を構造化して明確に示した上で、リーダーシップのアセスメントに用いている。アメリカは何でも構造化する傾向があるが、日本としてもそこから学ぶべきことは多い。

リーダーシップ・ヒューマンファクター・安全文化に関しては様々な具体的な取組みがある。ぜひ参考にして取り組んでいただければと思う。


との話をしました。

講演会終了後のアンケートでは、

安全について、JEAC4111における位置付けから始まり、体系的に整理された内容となっており良く理解できた。また、資料も簡潔にまとめられていて分かりやすかった。有意義な講演会でした。ありがとうございました。

リーダーシップの役割に関して人間の内面(特性)から説明頂いたことは、非常に有意義な時間であった。特に「米国電力会社の例:理念(価値)」の内容は興味深いものであった。

リーダーは職制上のものではなく、だれしもが、その場その場でなり得ることがあるため、リーダーシップの責任感が重要なことが認識できた。


などのご意見・ご感想をいただきました。


2.ワークショップ(第2部)

日本原子力発電株式会社及び協力会社の社員の28名が出席されました。
本ワークショップは「コミュニケーションスキルの向上」をテーマに、株式会社ジェック取締役の越膳哲哉様をお招きし、ワークショップを実施いたしました。また、ワークショップの後、本日学んだことの業務への活用と題し、JANSIによるグループワークを実施いたしました。

越膳様からの情報提供として、

人間はミスをする生き物である。我々は自分の中に持っている固定観念や思い込み、先入観といったものに縛られて、判断し行動を選択している。そして、これらが原因でミスが発生することが往々にしてある。したがって、そもそも自分の中にはどんな固定観念があるのかということを考え、そして自分の中に固定観念があるのだということを自覚するのが非常に大事である。

このミスが起こるメカニズムの中で、入力ミス(外から情報を取り入れる時点で間違っている)、記憶ミス(倉庫に入っているものが間違っている)、判断ミス(読みが間違っている)、行動ミス(最終的な出力が間違っている)といった4つのミスが発生する。このようなミスは、常に問いかける姿勢が損なわれるために発生することがある。常に問いかける姿勢を阻害するものとして、1つ目はあるべき姿がないもしくはあいまいということ、2つ目はあるべき姿はあるがそれに対して不納得の状態であること、3つ目は、あるべき姿を人に要求できない遠慮の意識、4つ目はあるべき姿が当たり前になって生まれる油断がある。

職場におけるコミュニケーションを円滑にすることで、ミスを抑止し、業務上の共通目標を達成するための良好な人間関係を築くことが可能となる。コミュニケーションの目的は情報伝達と感情交流であり、それが人間関係の土台となる信頼感を醸成することにつながるのである。良好な人間関係や組織とは、日常的な挨拶が行われていて、互いに対する敬意があり感謝の言葉がある関係であること、必要な対話がしっかりと行われている風通しの良い状態があり、方針等が共有されて、皆の共通目標になっているような組織である。一方で、コミュニケーションを難しくさせるものとして、同じ言葉を使っても意味づけが違う場合があること、伝えるときの態度/表情/言葉遣いで印象が左右されること、瞬間の感情に影響されることが挙げられる。こうした状態により、伝わるものも伝わらなくなる可能性がある。

今回は、「褒める」「聴く」「伝える」ということについてワークショップを実施した。

まず、褒める技術としては「相手が努力して得たものを褒める」「事実や証拠を示す」「集団の当たり前を下げることを褒めない」「お世辞を言うのではなく、褒める」が挙げられる。 聴く技術(=話させる技術)は、「単純相づちや反復相づちをうつ」「目線を合わせる、穏やかな態度・表情をとる」「聞き上手になる」「感情への応答(共感)をする」が挙げられる。特に、人の言葉の裏には隠れている事情や感情が存在するため、思い込みを回避するためにはできる限り様々な情報を幅広く聴くことが重要である。

伝える技術は「長く話さずに正確にわかりやすく話すことを目指す」「五感に訴える」「聞き手にイメージを沸かせる」ということが挙げられる。また、特に注意したり叱ったりするときには、まず事実を確認し、さらに特別な事情があったのかどうかを確認し、このことが重大な問題であることを互いに確認し合うというのが指導の技術である。

本日お話したことを一つ一つ実践していただき、よりよい職場を実現していただきたいと思う。


等のお話をいただきました。

ワークショップ終了後のアンケートでは、

とても分かりやすく身近な内容で今後のコミュニケーションスキルの向上に繋げられる事を習得できたので良かったです。発電所特有のコミュニケーションに関わる事例があったらさらに知りたいと思いました。

これほど飽きずに参加できた研修は初めてでした。非常に分かり易く最後まで楽しくできました。いくつかのトピックスの中で、特に「聴く技術」を職場で活用したいと考えています。

日常的に行っていることの気付きが多く感じられた。今までの行動を改善する良い機会となった。実業務の中で実施し、自分のスキルとして役立てていきたい。


などのご意見・ご感想をいただきました。

以上