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実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準を定める規則及び規則の解釈に対する協会意見

平成25年5月10日
原子力安全推進協会


1.実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準を定める規則の解釈の全般的内容について

要旨:
規則の解釈については、「本解釈に限定されるものではなく、規則に照らして十分な保安水準の確保ができる技術的根拠があれば、規則に適合するものと判断する」と前文に記載されていることは評価できるが、解釈には、具体的な「仕様規定」が多数あることから、被規制者が解釈の技術的内容を満足すればそれで足りると考えるおそれがあり、本来安全性を向上させるはずの最新知見の反映を遅延させることから、要求される性能を規定した「性能規定」とするよう、不断の努力を続けていくべきである。

意見/理由:
国の規制基準については、規定した仕様だけが認められる仕様規定の場合、最新知見の反映が遅れ、結果的に安全性向上を阻害する要因になるため、欧米諸国を参考として、これまで性能規定化を進めてきた経緯がある。原子力規制委員会におかれても、今般の新安全基準策定のための検討チームなどを通して、性能規定化が本来の規制のあり方と認識されているものと理解している。しかし、今回の規則の解釈については、仕様規定の記載が多数見られ、また要求される性能そのものも明確になっていない。新法制下では、継続的な安全性の向上を目指しており、規制基準についても本来あるべき姿である性能規定とすべく不断の努力が必須である。そのためには、例えば、原子力規制委員会の下に規制基準の性能規定化を進めるための常設委員会を設ける等、計画性を持って性能規定化を進めていくべきと考える。



2.実用発電用原子炉及びその附属施設の位置、構造及び設備の基準を定める規則第三条(発電用原子炉施設の地盤)第三項及び規則の解釈(別記1)について

要旨:
原子炉施設の安全性は、総合的なリスクが低いこと(安全目標を下回るかどうか等)で評価すべきであり、例えば、規則第三条第三項の地盤の「変位」についても、第一項及び第二項の「支持」、「変形」と同様に「変位した場合においてもその安全機能に大きな影響を及ぼすおそれのない地盤」とすることで、規則としてバランスがとれた適切なものとなる。安全性への影響については、変動地形学、地質学、地球物理学、地震学、地盤工学、耐震工学、構造工学、原子力安全工学等の知見を結集して、変位のリスクを評価し、原子炉施設の総合的なリスクを確認することで安全性を判断すべきである。
また、「変位が生じるおそれのない地盤」の解釈(別記1)においても、「将来活動する可能性のある断層等の露頭がある地盤に設置された場合」に、「安全機能に重大な影響を与えるおそれがある」と即断するのではなく、「そのリスクを評価した上で安全性を判断する」ことを記載すべきである。

(なお、第四条(地震による損傷の防止)、第五条(津波による損傷の防止)、第六条(外部からの衝撃による損傷の防止)において、地震、津波並びに地震及び津波を除く自然事象に対して「その安全機能に大きな影響を及ぼすおそれがないもの」とされており、第三条第三項の変位のみがこれらとは異なる要求となっていることは、総合的なリスクを評価するという観点からバランスが取れていないと考える。)

意見/理由:
福島第一事故の大きな反省点の一つは、地震評価、津波評価、土木・建築設計、機器設計、原子力安全等の関係する各分野の連携が脆弱で、知の統合が図れなかったところにある。この点の深い反省に立ち、今後の原子力の安全性を向上させるためには、関係する各分野に横串を入れ、知の統合を図り、全体像を把握した上で、原子炉施設の総合的なリスクを低減させるバランス良い安全対策を講じることが重要である。
原子炉施設の地盤の変位に関しても、変動地形学、地質学、地球物理学、地震学、地盤工学、耐震工学、構造工学、原子力安全工学等、理学と工学の叡智を結集して、原子炉施設のリスクを総合的に評価する観点が是非とも必要であり、これを規則や解釈に取り入れるべきと考える。
地震国であるわが国においては、理学分野、工学分野ともに地震に関する数多くの研究が長年積み重ねられ、世界をリードする最高水準の知見が蓄積されている。原子力の安全性の向上には、このような知的資源を総動員し十分活用することが肝要と考える。

以上