活動実績等

株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンにて
第178回安全キャラバンを実施

2019年8月8日、株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンにおいて、第178回安全キャラバンを実施し、安全講演会とグループワークによる意見交換会を行いました。

1.安全講演会


この講演会には、GNF-Jの社員及び協力会社員など92名が出席され、終始熱心に聴講されました。講演会の冒頭、GNF-J中島社長から、

今日は私達が自ら定めた安全の日でございます。私達にとって「安全の日」とは何だろうか、全員がまずは再確認をしていただきたいと思っています。過去の重大事故を思い返し、何ができていなかったのかを反省し、そして皆さんと一緒に、二度とこのような事故を起こさないと誓いたいと思います。
2013年以降に法令事故は起きていませんが、即時報告事象に当たるものは起きています。直近1年では即時通報事象も起きていませんので、逆に「気のゆるみ」などが起きていないかと心配しているところです。
これまで私達が取り組んできたプロセスの改善では、①工事の基本計画を詳細に作りこむ②計画に合わせてこれまでよりも一段も二段も深く踏み込んだリスクの抽出を行う。③抽出されたリスクに対しては工事の前に手を打ち、対策を施した後に工事に着手する。
この取り組みを始め、工事が進んでいる中でも、抽出に漏れたリスクが見つかったときは、迅速な是正処置の取り組みも生まれるようになりました。工事において見つかった「気づき事項」や「問題点」については、次の工事計画に反映させることも可能となりました。我々はこのようにプロセスの改善をしっかり行い、そこで生まれた財産を次の世代に継承していただきたい。
CAPに対する私の理解には、安全文化をしっかり醸成するための『エンジン』ではないかと理解しています。それぞれが、CAPとは何かを自分の言葉で説明できるように理解を深め、全員で問題を特定し、改善する組織となっていきましょう。

との貴重なお話を頂きました。

講演会では

引き続き 原子力安全推進協会 越前正浩から「安全文化とはなにか」~福島第一のような組織事故を決して繰り返さないために~と題して講演を行いました。


組織事故とは
これまで海外でも日本でも様々な組織事故が繰り返されてきました。これらの組織事故から何を学ばなければいけないか、様々な調査で明らかにされています。背景には無理な競争を強いられ、コスト削減によって安全を最優先に考えられない組織文化になっていました。縦割り組織・部門の厚い壁がおのずと形成され、安全よりも組織を守る考えが優先され、トップダウンで部下を絞めつけることでそれぞれが安全に対して気付こうという意識が薄れていました。上下のちょっとした職域関係の違いが天国と地獄のような環境が生まれ、言いたいことがあっても言い出せない、悪いと皆わかっていても言い出せない、そのような状況で、組織事故は繰り返され、個人ではやらない事でも組織の集団で判断をすると、やってしまうというのが、組織の特性です。いろいろなところで様々な人が組織事故を引き起こさないように対策を施しているが、組織文化の問題という課題に、それぞれ深掘りが足りないからこそ起きている事象だととらえることができます。

安全とは
リスクのすべてを抑え込み安全を達成するというのは、人間や組織の特性を考えると、そもそもそういうことは出来ないということがわかってきました。また、一つ一つの局面だけを見ても、危険の大きな波の揺らぎを感じることはできません。それぞれの局面から危険の揺らぎが大きくなってきた、それが悪い方向に向かっているのではないか、という事を組織が考察することが必要です。安全とは、複雑でデリケートなものなので、システムをどれだけ整備してもうまくいきません。工程間の争い事が起きれば、仲間同士で手を取り合って工程全体の兆候を見て、それぞれがそれで良いのかを話し合えること。最後は人が判断し、支えなければいけなく、そのためには、組織を常に活性化する活力を持った人材を育成する必要があるのです。

組織・文化については
組織文化を氷山の三層モデルで表現すると、常に見えているものは、規定や仕組みなどの人工物です。その下には目に見えずとも動いている「規範」「価値観」「固定観念」のようなものが存在し、人々の行動を左右しています。個人や組織は安全をつかさどるソフトウエアーのようなもので、自分達の価値観や固定観念を直接見ることは非常に困難です。組織はそれぞれの事象を積み上げると立派な組織ができるというものでもなく、一つの鍋の中で様々なものがグツグツと煮込まれ、どのような味になるかわからないというものに近いのです。そのような中でも何かちょっと変な味のものができ始めている。この変な味は安全に対して良い方向に向かっているのか、悪い方向に向かっているのか、そういったものが組織文化というものです。この味を見るときに大事なのは、鍋の中だけを見ていれば良いというのではなく、周囲には様々な関係者がいます。そういった人達の期待や要求が制約条件として、組織文化の「味」が決まっていることも理解して見ていかなければいけないのです。

安全文化とは
組織の特徴はそれぞれの個人の特徴を積み上げれば、その組織の特徴を表すというものではなく、人と人のつながり、いわばネットワークで自然と出来上がってくるものです。その関係性は千差万別でそれぞれの組織の特徴からもっと奥のほうを見て、目を配って、それぞれの個人に真剣に向き合えば、少しずつ見えてくるものです。人間はパーツの一つではなく、組織の不可分の一体として、財産として、組織=人として、自分自身を大きく振り返ってみてください。これはかつて「日本的経営の特徴」としてもてはやされてきたものでありました。

最後に
山本五十六の有名な言葉がありますが、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ。」という言葉は有名ですが、次に続く二章三章と合わせて理解することで意味が繫がります。組織文化を醸成するには、人を育てることが一番大事で、小さな失敗から学ばせ、小さな失敗に恐れることなく、信頼して任せられる器量を持ったリーダーが必要という事です。小さな失敗を経験させ、そこから学ぶことで、人は成長し、組織のパフォーマンスを高めることができます。本当の意味で、組織のパフォーマンスが上がるその一方で、安全文化の醸成だけが置き去りになるということは、絶対に起きないものです。


続いて、原子力安全推進協会の深野琢也から「安全文化のアセスメントとその事例」と題して講演を行いました。

はじめに
本日の中島社長のご講演をお聞きして、「想定内であっても起こり得る不適合が増えている」「根が深い不適合が起きている」「PDCAは大きく回りだした」という、三つのキーワードについて感銘を受けました。本日の安全文化のアセスメントの講演内容では、これらを解決するための多くのヒントが隠れていますので、それを自分達の活動にしっかり取り入れてください。安全文化のアセスメントは規制対応でやらなければいけないことになりましたが、本来は規制のためにやるのではなく、本日の講演では品質基準の規則やJEAC4111を解説するものでもありません。我々が長年アセスメントを実施してきた経験や教訓、失敗体験もございます。それらの経験を踏まえてどのようなアセスメントを実施すべきかをお話しさせていただきます。

安全文化アセスメントとはなにか
安全文化のアセスメントとは、自分達の組織のありようをしっかり見ることが目的であります。どのようにすればパフォーマンスを上げていけるのか、自主自立的な取り組みであります。品質の規制基準が変わったので仕方なくやるかという側面も確かにあろうかと思いますが、規制対応のためということで進めると、それが組織のためになっているのかと言えばあまり良い活動になりません。自分達の組織をどうしたいのかを真摯に考えることが成功体験の秘訣であります。いろいろ不適合や事故の対策として改善活動をやっているが、「なかなかうまくいかない。」「どうして安全のパフォーマンスが上がらないのだろうか。」「自分達はどこに向かっているのだろうか。」と感じることがあります。そういった状況では、第二層・第三層の自分達が持っている価値観、人間的な特性として、例えば「楽をしたい。」「私はここで働いていることで十分だ。」そういう価値観が多くの人にあるのであれば、安全に対してポジティブに活動しようとすることに対し、阻害することになり得るということです。そういった文化的なところに着目し、パフォーマンスが上がらない要因を見つけに行くとことが大事です。

安全文化アセスメントをどう実施しているのか
評価の種類には外部(第三者)評価、自主的な内部評価、規制による評価の三種類がありますが、なぜ三つもやらなければいけないのか、自己評価だけで十分ではないかというお考えもあるかもしれません。しかし、人間には自分で見えたもの、認識したものにしか改善に向かう力を発揮できない特性があるので、いろんな方面から評価することが必要になります。多種多様なデータを用いて自分達のありのままの肖像画を描くことが大事です。一つだけの情報で単純に「これが悪い」「不適合や事故を起こした個人が悪い」となってしまうのでは特に危険です。多種多様なものから包括的(システミック)に見て、その奥底にあるものを考察することを心掛けなければいけません。

米国ではどのように実施しているのか
事例①では、ホウ酸水の冷却水が漏れ、それが圧力容器を腐食させたことですが、慢性的に漏洩していることはわかっていたし、茶褐色に変色も確認出来ていたので、腐食が継続していることも把握していました。格納容器モニターのフィルターは錆の付着により交換頻度が増加し、一次冷却水の漏洩も10倍まで膨れ上がっていたが、それでも大丈夫と判断がされていました。INPOのビアレビューでも、何かがおかしいと気づいていましたが、原因が分からなかったので事業者におかしいと伝えることができませんでした。そこには、五感で感じることを伝えることができない業界の風土がありました。この事故によって、事業者側、規制側、双方が同じ視点で安全文化を評価する必要性が生じINPOの10Traitsが生まれました。
事例③では、CAPでの改善等に対し、経営層からそれぞれ「ああしろ、こうしろ」とばらばらに指示が出され、組織全体としてまとまっていない事例です。これらがなぜそうなったのかを全体像をマインドマップ化し、対話により理解を深めたことで、経営層が「そうか、私達の指示が悪かった。」「私達自身の組織文化に問題であった。」という事に気づき、行動を起しました。ここで変革できた大きな要因は、彼ら自身の組織文化が引き起こす問題を明確に理解して対処したことです。経営層ほど自分達の組織の特徴が理解されにくいのは世界的にも共通しているとの研究成果もあり、別に恥ずかしいことではありません。ここに真摯に向き合うことが大事です。
組織文化は日々変わっていくものですので、何度も何度も繰り返し実施していくことが必要です。福島第一の事故以来、組織文化があらゆる組織行動に影響を与えるものだという考えに変わっています。

二つの講演終了後のアンケートでは

これまではルールを決めてもらって(決められて)それを守るだけだったが、これからは五感をフルに活かして自らが気付き改善していく、と解釈しました。
個人も組織も気力、体力が健全で心に余裕がないと自ら考えることをおろそかにしてしまう。GNF-Jは厳しい状況なので、それを越えてがんばらなければいけないと感じた。
安全文化を構築するには、大きな視点で考えることが重要で、自分の姿を直視するとともに、分け隔てのない関係性が必要である。今後、自分の業務のなかで活用してみたいと思う。

など、前向きな意見が多く寄せられました。


2.グループワーク

(株)GNF-Jでは、原子力安全として、法令・手順の遵守と新規制基準への対応のもと、潜在的リスクを認識し、原子力安全を最優先とした確固たる安全操業を追求する。という目標を掲げ活動し、日頃の労働安全衛生の活動では、①リスクの事前検討②オブザベーション③教育訓練④緊急時対応訓練 を実施しているが、事務局としては、「常に問いかける姿勢」が弱く、そこを改善したいとの思いが強く、ニュースでも多く取り上げられたJR西日本での新幹線の重大インシデントを題材に、前半のグループワークでは当該組織にある、組織のありようを考察し、安全に関して気がかりな点をグループで話し合っていただいた。後半のグループワークでは、自職場に置き換えた場合に、自職場にはどんな気がかりな点が存在し、それを改善するためにはどのような行動がそれぞれの立場で必要かを話し合っていただきました。

各グループからは気がかりな点として、人材が不足しており、技術伝承ができていない事や、組織間は連絡しづらい環境にあるなどの率直な意見が多数出されました。打開策として個人の意識の向上や、業務の取りまとめ役は皆の意見をまとめられる人材になるべきだ、幹部からの意識改革の必要性や危機感を共有することが必要などの自由な意見が出されました。





アンケートでは

リスク低減は大事なことであり、常に考えて行動しなければいけないことを再確認できた。
組織の作り出す雰囲気が大きくリスクに寄与することが分かった。
普段あまり議論する機会がないメンバーと議論できて有意義だった。

とのご意見を頂いた。


以上