活動実績等

日立造船株式会社 有明工場にて第145回安全キャラバンを実施

 平成26年5月9日、熊本県長洲町にある日立造船株式会社有明工場において、第145回安全キャラバンを実施し、安全講演会と安全講習会を行いました。

1.安全講演会

有明工場に従事する日立造船及び協力会社の職員、更にTV会議システムを利用して東京本社の職員、合わせて55名が参加されました。

講演会の冒頭、有明工場 工場長 細川 賢慈 様より

「本日はお忙しい中、有明工場において安全キャラバンを実施して頂きますこと、誠に有り難うございます。
当工場では、原子力製品としての使用済燃料輸送容器のキャニスターをはじめ、石油化学プラントのリアクター、セパレーター等の圧力容器、ならびに舶用ディーゼルエンジン等を生産しております。生産現場におきましては、安全はなによりも優先という形でやっております。これは、先ほど申しました製品機種にかかわらず共通していることですし、現場部門だけでなく管理、間接部門におきましても永遠の課題と考えております。しかしながら、安全に関してはゴールが見えないといいますか、安全で当たり前というところがございます。したがいまして、気の緩みや慣れに陥りがちですが、常に気を引き締めて考えをリフレッシュさせ、良い意味での緊張感をもって日常業務に当って頂きたいと思います。
本日は、午前の部でJR東日本総合研修センター運輸研修部長の佐藤寿様より「安全を創る」と題して、安全に対する動機付けや心がけ等についてご講義頂きますことは、非常に有意義だと思っております。先生のこれまでの豊富な経験は、我々の安全に対する取組におきましても大変有意義なものと思いますので、どうかよろしくお願い致します。また、午後の部では、原子力安全推進協会安全文化グループの吉村部長様より、根本原因分析(RCA)についてご講義いただくことになっております。最近、当工場におきましても、原子力機器、プロセス機器、原動機それぞれの部門におきまして、残念ながらトラブルが発生している現状がございます。それぞれのトラブル事象に対して再発防止策を立て、そのための原因分析がまだまだ十分ではないというご指摘をお客様から頂いている現状がございます。これまで我々の方でも原因分析につきまして勉強会等を実施しておりますけれども、十分に浸透出来ていないというのが現実と思っております。本日は、RCAに関してご講義を頂けるということで、これまで勉強してきた方、あるいは今回初めて聞く若い方もおりますので、理解の一助になるものと期待しております。本日は、一日長丁場になりますけれども、どうか、この会が我々にとって有意義なものになるよう、是非よろしくお願いしたいと思います。」

とのご挨拶をいただきました。

ご挨拶の後、JR東日本総合研修センター 運輸研修部長 佐藤 寿 様から「安全を創る ~JR東日本の取組みを例に~」と題してご講演いただきました。

講演では、

この世の中に「安全」というものは自然な形では存在せず、我々の身の回りにあるのは危険ばかりである。この危険から、お客様、自分自身、部下や同僚の身を守るために、知恵を出すこと、頭を使うこと、努力すること、汗をかくこと、行動することが、安全に取り組むということである。会社から押しつけられて嫌々取り組むのでは、積極的な行動にはつながらない。 こうした考え方から、JR東日本では、「基本動作を愚直に実行しよう」「正しい報告と速やかな報告に心がけよう」「慌てない、焦らない」「危ないと思ったら列車を止めよう」「過去の教訓、先輩の教訓から学ぼう」というテーマを中心に、安全教育を実施している。

過去の教訓や先輩の教訓から学ぶことも大切である。JR東日本では、阪神淡路大震災の際に新幹線高架橋の復旧応援に行った際の気づきから、活断層の真上にある高架橋を調査し、耐震補強を実施した。その後、新潟県中越地震の際には新幹線が脱線する事故が発生したが、この対策が功を奏し、一人の死傷者も出すことはなかった等の事例があった。このような事例をもとに、研修センターでは、鉄道人魂を持つ社員を育てるため、頭と体と心で教えている。

最後に、事故やトラブルにつながるヒューマンエラーについて説明する。まずは、新人が陥りやすいエラーとして「知覚情報の取捨選択が上手く出来ない」「外部からの割り込みで全体の手順が乱れる」ために発生するエラーが挙げられる。現場第一線が陥りやすいエラーや管理者が陥りやすい幻想もある。 こうしたことを念頭に、今後も御社の安全を考えていただきたい。


との貴重なお話をいただきました。

講演会終了後のアンケートでは、

安全を創るためには、やらされるのではなく、能動的に自分から知恵を出し、努力することが大切であるということを改めて感じた。

非常に解り易く、JR東日本の事故の例や安全対策、日々の訓練の成果など貴重なお話を頂きました。私は、まだまだ若手ですが、日々周囲に気を配り安全を意識しようと感じた。

今まで自分が形式的に行ってきた指差喚呼には3つも貴重な意味があることを知り、今まで以上に指差喚呼を真面目にやろうと思った。また、上越新幹線列車の脱線事故の背景にあるエピソードは大変興味深いものがあった。

指差喚呼の基本動作や教育方法を具体的に解り易く、例を混じえて説明されたので、良く伝わりました。今回の講習成果を職員に伝え、現場に定着する様に指導していきます。


などのご意見・ご感想をいただきました。

2.安全情報交換会

 午後は、当協会プラント評価部 安全文化グループ 吉村 誠一部長より「ヒューマンエラー分析手法の概要 ~HINT/J-HPESを例に~」と題して根本原因分析手法の講習がありました。
 参加者は、有明工場及びTV会議システムを利用して東京本社、大阪本社の職員、合わせて46名が聴講されました。

講習では、

ヒューマンファクターには、人間の心理・生理、集団のコミュニケーション・権威勾配、あるいはヒューマンエラー防止の方法論といった人間に関するものと、作業の内容、ソフトウェア、あるいは職場環境といった作業/環境に関するもの、そして教育、管理、資源の配分といった管理/組織に関するものがある。ヒューマンファクターが人間の知覚・判断・行動に影響を与え、最終的にはトラブルや事故を発生させる根本原因あるいは背景要因となる。こうした要因を追求するために、「要因を洗い出す視点の提示」「チェックリスト方式」「ガイダンス付きの追求」「なぜなぜ分析」といった様々な分析のやり方がある。その中の電力中央研究所で開発されたなぜなぜ分析の一種であるHINT/J-HPES手法について、説明する。

HINT/J-HPESは、①事象の把握(どのような経緯で事象が発生したのか/どのような行為が事象を起こしたのか)、②情報収集・要因整理(どのような状況下でその行為が生じたのか)、③要因分析(なぜそのような行為が生じたのか)、④対策の立案(どのように改善したら良いか)という4つのステップで実施するものであり、それらの具体的な手順、分析方法、対策の立て方について紹介している。

以上